はーい。どうも。どいてどいてー。
はい、警視庁捜査一課の者です。
あ、皆さん動かないでくださいね。
申し訳ないんですけれど……今から皆さんは全員被疑者です。
私の許可なくここを離れたり、物証に触れることは許されません。
まあ、安心してください。ちゃちゃっと解決しちゃいますんでね (笑)
この部屋の様子、死体の状態から、大体の目星はついてますから。
……おっと、それ、触らないでもらえます?
万一証拠がなくなりでもしたら、アンタただじゃおかんぞ。
おいおいおいおい、こりゃまたヒデーな。
この辺一帯焼け野原じゃねーの。
お前らヴィラン(悪党)は好き放題暴れて気持ちいいのかもしれねぇがよ、困る人がいっぱいるんだわ。
だから暴れたいならどっか他所でやってくれよ。
まあ、お前らに言ったってわかってもらえないと思うけどさ。
それに、俺が本当に許せねぇのは、そんなことじゃねぇ。
正直、街がどんだけ壊れようが、どうだっていい。
ただ、お前は一つ絶対にやってはいけないことをした。
……俺のかわいい部下たちに手出したことだ。
覚悟しろよ?
おい。これはなんだ?
どういうことだ。
どうして私の患者を、他の医者がオペしようとしているんだ?
なに? 私が無免許医だからだと?
ふざけるな! それならば何故私を呼んだ!
お前たちが私のことをどう思っているかは知らんが、この患者は望んで私の患者になったのだ。
そして私も、必ず治すと約束した。
だから、どんな理由があろうと、私以外の医者に触らせるわけにはいかない!
ガッハッハッハ!
お前が選ばれた勇者だと?
笑わせるな。
そんな細い腕で何ができる?
その剣すらもまともに振れんだろう。
ふん、まあいい。
お前が勇者だと祭り上げられているなら、お前を倒し、人間どもをさらに絶望の底に叩き落としてやるまでだ。
さあ、かかってこい。
お前に、父さんと母さんから一つ話があるんだ。
辛い話かもしれないが、とても大切な話だ。
聞いてくれるか?
うん。それじゃあ話すが……実はな、父さんと母さんはお前の本当の親ではないんだ。
お前の本当の両親は、今は天国にいる。
お前が幼い頃、2人は流行り病(はやりやまい)にかかって、そして、最後にお前を私達に託したんだよ。
ずっと騙していてすまなかった。
もしお前が私達のことを受け入れられなければ、ここを出ていってもいい。
でもな、これだけは信じてほしい。
お前のことを大切に思っているのは、決して託されたからじゃない。
ただ、純粋にお前を愛しているよ。
君はあの子に会ったことがあるのか。
その顔、なにか嫌なことでも言われたかな。
すまなかったね。あの子に代わって謝るよ。
あの子は幼い頃に両親をなくしてな。
親戚中たらい回しにされて、そして、結局この施設にくることになった。
それが原因だろう。人に心を開かなくなってしまった。
だからよく勘違いをされてしまうが、心根は決して悪い子じゃない。
それどころか、とても優しい……優しくて、弱い、普通の子供なんだよ。
できれば仲良くしてやってほしい。
ここはワシに任せい!
ふふふふ、これほどまでに血が滾る(たぎる)のは、50年前の戦い以来だ。
ワシを前にして、顔色一つ変えぬか。
……老いぼれだと甘く見るなよ?
これからお主が戦う相手は、この国の伝説だ。
伝説の片隅にお主の名を刻んでやろう!!
いけません、お嬢様。
貴方様はこの国を代表する貴族、リーバンス家のご息女ですぞ。
ダンスはできて当然。
できないなどというのは、一族末代までの恥でございます。
パーティまであまり日もありません。
練習あるのみです。
大丈夫。
そう難しく考えずに、音楽に身を委ねるのです。
今日はこの爺やめがお手をひきますから、お嬢様は何も考えず、ただダンスをお楽しみください。
あー?
なんだって……?
申し訳ないんじゃが、もう一度言ってくれんか……?
ええ? なにぃ? 婆さんの長芋? なーんじゃって?
って、さっきからうるさいんじゃ!!!!
アンタ、声がデカすぎんだよぉ!!
小さくて聞こえないんじゃなくて、大きすぎて聞き取れないんじゃろうが!
老人だからって耳が遠いと決めてかかるな、バカモンが!!!!